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ちょうちょの話

ちょうちょの女の子と男の子がいました
いつも二人で、花から花へ
仲良くひらひらと飛んでいました

ところがある日、ちょうちょの女の子は
わるいカラスにさらわれて
桜の木にとじこめられてしまいました

ちょうちょの男の子は、
どうにかして女の子を
救い出そうとしましたが
桜の木に閉じ込められたら最後、
そこから連れ出す事はできないのです

こうなってしまうと、
助け出すチャンスは次の年の春しかありません


実は、ちょうちょの女の子が
わるいカラスにさらわれるのはよくあることで、
さらわれて桜の木にとじこめられたちょうちょは
カラスに魔法をかけられて、桜の花びらにされてしまうのです
そして春になると、元ちょうちょの花びらも
他の花びらと一緒になって桜の花を咲かせます

桜の花のいのちはみじかい

1週間もたたないうちに
桜の花は散りはじめます
元ちょうちょの花びらも
ひらひらと舞散ります

元ちょうちょの花びらは
舞い散って、地面に落ちると
そのまましんでしまいます

でも、ひとつだけ助ける方法があるのです


桜が舞い散る季節、
ちょうちょの男の子は
桜ふぶきの中を
女の子をさがしてひらひらと飛んでいました

たくさんの花びらの中から
ちょうちょの女の子だった花びらを
さがすのはかんたんではありません

なにしろ、花びらなんて
一見ぜんぶおんなじに見えますからね

でも、ちょうちょの男の子は
たくさんのなかから
たった一枚の花びらを見つけ出しました

その花びらは今にも
地面に届こうとしているところでした

ちょうちょの男の子は
いそいで飛んでいくと
その花びらにちゅっとキスをしました

すると、花びらはとつぜん
ちょうちょの女の子のすがたにもどりました
そして静かにはねをふるわせると

ちょうちょの男の子とつれだって
仲良く飛んでいきましたとさ


おしまい
by momo-cinnamon | 2006-08-22 13:59 | ゆめとうつつのあいだで


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